【オフィス移転事例】技術で未来をつくる人々のために、”壁を立てない”オフィスという選択を

理学・工学の知見を土台に、ソフトウェア開発からコンサルティング、研究支援まで幅広いICTソリューションを提供してきた株式会社アーク情報システム。メーカーに依存しない独立系としての強みを活かし、時代の技術課題を解き続けてきた同社にとって、“働く環境”は、技術を生み出す「人」を支える基盤そのものです。

今回のオフィス移転は、派手な刷新ではなく、日々の違和感を一つひとつ丁寧に見直していく中で、静かに必然へと変わっていったプロジェクトでした。建物の経年による変化や、フロア構成の制約、周辺環境の移り変わり──それらが積み重なる一方で、業務そのものは問題なく回っていたがゆえに、誰も“すぐに移転すべき理由”を見いだせずにいたといいます。

では、どのようにして「いつかできたらいい」が「今、変わるべきだ」へと変わっていったのか。そして、同社が今回の移転で実現したかった“壁をつくらない働き方”とはどのようなものだったのか。

本インタビューでは、プロジェクトの中心となった 代表取締役社長 中島康普 様、取締役 総務人事部長 守屋恵 様、人事総務部 課長 佐藤芳一 様 の3名にお話を伺いました。

「技術を支えるのは人であり、その人が生きる環境にこそ投資すべき」──そんなアーク情報システムの思想が、どのように新しいオフィスに形づくられていったのか。その軌跡を紐解きます。

オフィス移転の背景・課題
  • 時間の経過とともに生じた、オフィス環境に関する違和感
  • 部門分断で日常の連携が滞っていた
  • フロア分散で設備・スペースの重複とムダ発生
オフィス移転後の成果
  • ビル環境が改善し来客時の安心感が向上
  • ワンフロア化で対話と連携が自然に活性化
  • 機能を集約し動線もスリムで使いやすく
目次

いつか、が“今”に変わったとき──静かに始まった移転プロジェクトの本当の理由

――今回のオフィス移転を考えられたきっかけ・目的を教えてください。

中島様:実は、私たちは“積極的に移転を探していた会社”ではありませんでした。社内でも、「いつかできたらいいよね」という話はあっても、今すぐに動かなければならない決定的な理由があるわけではなかったんです。

アクセスもよく長く慣れ親しんだオフィスでしたし、日々の業務は大きな支障なく回っていました。だからこそ、「現状維持でいいのでは」という空気も、どこかにあったと思います。ただ、それは現実から目を背けていたというよりも、「今のままでもなんとかなる」という感覚が正直なところでした。

一方で、築50年ほどが経過したビルということもあり、年数相応の部分が少しずつ気になるようになってきました。耐震性への配慮や、電気使用量の削減といった環境面での改善について考えなければいけない場面もありましたが、すぐに実現するのは難しく、思うように進まないもどかしさを感じることもありました。

さらに、ご依頼いただくお客様から「入退室管理は問題ないでしょうか」「セキュリティ面はどのようになっていますか」といったご質問をいただくことが増えていました。本来であれば、より安心して案件をお任せいただける環境であることが望ましい中、必要に応じて補足のご説明をさせていただく場面も少なくありませんでした。そうしたやり取りを重ねる中で、ブランディングの観点からも、このままでよいのだろうかという思いが、次第に強くなっていきました。

加えて、オフィスは5フロアに分散しており、私たちはそれを“当たり前の前提”として受け入れていましたが、フロアが増えるほど設備や備品は重複し、スペース効率も悪くなります。「もう一つ会議室が必要だから別フロアに作ろう」「このコピー機はこのフロア用に」──気づけば、同じ機能があちこちに存在していました。それでも当時は「そういうものだ」と思っていたのですが、後から振り返ると、そこにも大きなムダが隠れていたのだと思います。

もともと「何が何でも移転したい」という会社ではなかったからこそ、環境・安全性・コスト・ブランドのすべてを見つめ直し、「現状維持」と「変化」の間で、もう一度きちんと意思決定したかった。今回の移転は、そんな“ゆるやかな違和感”を一つひとつ解きほぐしていった結果として、自然に前に進んでいったプロジェクトだったと感じています。

――オフィス移転の前に抱えていた課題はどのような点でしょうか。

佐藤様:一番大きかったのは、やはり“フロアの分断”でした。旧オフィスは部門ごとにフロアが分かれていて、何か相談したい時はエレベーターで移動し、別フロアまで足を運ぶ必要がありました。業務そのものは問題なく遂行できていましたが、「ちょっとだけ聞きたい」「顔を見て話したほうが早い」といった場面で、ワンクッション多く手間がかかる。その小さなストレスが積み重なって、コミュニケーションの頻度や質をじわじわと下げていたように思います。

また、フロアが増えるほど、機能や設備、備品が“重複する”という課題もありました。会議室やストック品、書庫、コピー機など、本来であれば集約して管理できるものが、各フロアにそれぞれ存在する状態でした。結果的に、総面積は約1,400㎡と広く使っていたはずなのに、「スペースが足りない」「あの空間はほとんど使っていない」といった矛盾も生まれていたんです。

そしてもうひとつ、目に見えにくいけれど確実に存在していたのが、“余白のない働き方”になっていたことです。業務フロー自体は大きく変える必要を感じていなかったものの、物が増え続け、ルールや保管物も積み上がっていき、いつの間にか「削る」「見直す」という発想がしづらくなっていました。気づけば、オフィスが“変えづらい前提条件”になってしまっていたのだと思います。

――そのような課題は解決されましたでしょうか。

守屋様:移転してみてまず感じたのは、「面積が2/3になったのに、狭いと感じない」という不思議さでした。

旧オフィスでは約1,400㎡を5フロアで利用していましたが、新オフィスでは約1,000㎡を2フロアに集約しています。それだけ聞くと“縮小”のように思えるかもしれませんが、実際に働いてみると、むしろ動きやすくなった印象の方が強いんです。これは、今までフロアごとに重複していた機能やスペースを見直し、「本当に必要なもの」に絞って配置できたからだと感じています。

また、ワンフロアで部署が顔を合わせるようになったことで、コミュニケーションの質は目に見えて変わりました。ちょっとした相談がスッとできる、一言声をかければすぐに確認が進む──その積み重ねが、意思決定のスピードを確実に押し上げています。「わざわざ会いに行く」のではなく、「たまたま目が合ったから話す」というレベルまで距離が縮まったのは、ワンフロア集約の大きな効果だと思います。 そして、オフィスとしてのセキュリティや信頼性がしっかり担保されたビルに変わったことで、来客時の印象も大きく変わりました。「入退室管理はどうなっていますか」と聞かれることも少なくなり、安心してお客様をお迎えできる環境になったと感じています。

“壁をつくらない”働き方へ。自分たちで創る「自然体でいられる場所」

――移転する際の物件選定で、重視されたポイントについてお聞かせください。

中島様: 私たちが新しいオフィスに求めたのは、“派手なオフィス”ではなく、「ちゃんと働けて、ちゃんと話せる場所」であることでした。その意味で、一番意識したのは“壁を増やさないこと”です。

物理的な壁も、心理的な壁も、できるだけ少ないほうがいい。だからこそ、まず前提として「最低限のフロアでまとまった区画を確保できること」を重視しました。フロアをまたいだ移動が当たり前だった状態から、なるべく同じ空間の中で部署が完結できるようにしたかったんです。

もちろん、耐震性や建物のグレード、安全性といったハード面も欠かせませんでした。長く使っていけるビルであること、普通借家契約で将来の見通しが立てやすいことは、会社として重要な判断軸でした。また、旧オフィスで課題となっていた電源容量やネットワーク環境も、新オフィス選びにおいては非常に大きなポイントです。製品や機器を扱う業務特性上、「止まらないインフラ」「ストレスなく動くネットワーク」は妥協できない部分でした。総延長4kmにも及ぶケーブル敷設や約200個のコンセント増設など、今回は最も予算を投下した部分でもあります。

 結果として、今のオフィスは「うちの働き方がそのまま収まるイメージが持てるビル」でした。他にも候補物件はありましたが、「ここなら背伸びせずに、でも今より確実によくなる」と自然に思えたことが、最終的な決め手になったと感じています。

――現在のオフィスで気に入っているポイントはどこですか。

佐藤様:一番のお気に入りは、やはり“空気感”です。見た目としてはキラキラしたデザイナーズオフィスというわけではなく、どちらかといえば落ち着きのある、実用性重視の空間です。ただ、その背伸びしすぎない雰囲気が、アーク情報システムらしさにすごく合っていると感じています。パーテーションも必要最低限に抑え、区切りすぎないレイアウトにしたことで、視線が抜け、フロア全体の一体感が生まれています。

 そして「無駄な壁を立てない」考え方は、レイアウトだけでなくコミュニケーションにもつながっていると思います。誰がどこに座っているのかが自然と見える。社長室もあえて設けていないので、トップの様子も含めてフロア全体が同じ空気を共有できる。そのフラットさが、日々の会話を生み出しているように感じています。

細かいところでは、冷蔵庫を大きなものに変えたことで、飲み物やちょっとしたお菓子、アイスなどをストックしやすくなりました。休憩スペースや、社内で“うちの庭”と呼んでいる中庭が見えるリラックススペースもあり、そこで自然に雑談が生まれたり、ふっと力が抜ける時間ができたりします。仕事の効率という意味だけでなく、「ここで働いていて心地いい」と素直に思えるポイントが、あちこちに散りばめられているオフィスだと感じています。

――あらためて、当社の対応についてご感想をお聞かせください。

守屋様:振り返ると、私たちが移転を本気で意識しはじめたのは「非日常の景色を一度見たこと」がきっかけでした。他社さんが紹介してくれた富士山の見えるオフィスは、費用面でまったく現実的ではありませんでしたが、あの開放的すぎる眺望に触れた瞬間、「うちの今の環境ってどうなんだろう?」と自然に自問し始めたのは事実です。

ただ、それはあくまで“揺らぎ”であり、“憧れ”であり、現実的な移転の材料とは言えませんでした。あの段階では、まだ私たちの移転は「いつかできたらいいね」の延長線上にあったと思います。

そんな中で、阿由葉さんが見せてくれた物件は、これまでのものとはまったく違いました。理想のような眺望ではなく、派手さも強烈なインパクトもない。けれど、広さ・条件・将来性・コスト、そのすべてが私たちの“現実”にしっかりと足をつけていて、「ここなら本当に移れる」という実感を初めて持てた物件でした。その瞬間から、移転が「憧れ」ではなく「選択肢」に変わり、そこからさらに「決断」へと加速していったのだと思います。

もしあのタイミングで阿由葉さんに出会っていなければ、私たちはおそらく、今も“いつかできたら”という曖昧なまま、旧オフィスで働き続けていたかもしれません。移転に前のめりではなかった私たちの温度感を丁寧に汲み取りながら、「背伸びせず、それでいて確実に前に進める道筋」を示してくれたのはスリースターさんだけでした。

そのうえで、社内で限られた時間の中、各部門の要望が複雑に絡む状況を整理し、判断を迷わせない提案と導線をつくってくれたことも大きかったです。私たちが腹落ちして進めたと胸を張って言えるのは、阿由葉さんが“現実解としての最適な答え”を見せてくれたからだと思っています。

要するに── 「阿由葉さんじゃなければ、アーク情報システムの移転は実現していなかった」。

これは社長含め、プロジェクトメンバー全員の共通認識です。

――オフィス移転後の社内の様子はどうでしたか。

中島様:移転後すぐに社内向け内覧会を行ったのですが、エントランスを見た瞬間に、あちこちから「おぉ〜」という声が聞こえてきました。長年、味わいはあるものの少し古さも目立つオフィスで働いてきたメンバーにとって、明るく整った空間はそれだけインパクトが大きかったのだと思います。

一方で、「フロアが広くなったことで、少し個の距離を感じる」という声もありました。ただ、それはネガティブな意味というより、「ここからどう自分たちの色を足していくか」という前向きな課題意識に近いものでした。IT企業らしく、棚を置いたり、ちょっとしたディスプレイを考えたり、“巣作り”をしたくなるメンバーも多く、オフィスを一緒に育てていくフェーズに入ったのだと感じています。

人が集まり、価値が育つ場所へ──働く環境を“更新し続ける”という選択

――会社として今後取り組んでいきたい事はありますか。

守屋様:IT職種はテレワークがしやすい業種ですが、最終的に価値を生み出すのは“人と人との対話”だと考えています。だからこそ、オフィスは単なる「机と椅子の置き場」ではなく、人が集まり、会話が生まれ、ちょっとしたアイデアが形になっていくための“土壌”でありたいと思っています。長い時間を過ごす場所だからこそ、「居心地のよさ」や「安心していられる感覚」を大事にしながら、日々アップデートしていきたいですね。

私たちの仕事には、目に見える商品があるわけではありません。パソコンに向かう人の技術や発想が、そのままアウトプットになります。だからこそ、その“人”が最大限力を発揮できる環境に投資することは、会社にとって最も本質的な投資だと思っています。オフィス環境や働き方を「一度整えたら終わり」にするのではなく、「今のメンバーにとっての最適」を更新し続けることを、これからも意識していきたいです。

そして、“小鳥のさえずりが聞こえるうちの庭”のような、ふと力が抜ける場所を大切にしながら、社員と一緒にオフィスを育てていきたい。「人が集まると、価値が生まれる」。その感覚を、今後もこの場所から育てていけたらいいなと思っています。

――最後にオフィス移転を考えている方にアドバイスがあればお願いいたします。

中島様:オフィス移転は、一見すると“計画と条件”で進んでいくように見えますが、実際には“ご縁とタイミング”が大きく作用する出来事だと思います。私たちも当初は移転するつもりなどまったくなく、「いつかできたらいいよね」という、どこか現実味のない会話をしていた程度でした。今の場所で業務は回っていましたし、大きな不満があったわけでもありません。だから、移転は“遠い未来の話”のようにすら感じていました。

ところが、軽い気持ちで始めた内見が、少しずつ私たちの感覚を揺さぶっていきました。「ここは眺望がいい」「この動線は働きやすそう」と小さな発見を積み重ねていくうちに、これまで当たり前だと思っていた旧オフィスにも、新たな気づきや改善のチャンスが見える瞬間があります。そうして心がゆっくり動き始めると、「変わること」への抵抗よりも、「今より良くなれるかもしれない」という期待が勝り始める。その変化は決して劇的ではなく、むしろ静かで自然なものです。

実際、私たちの移転が現実のものになった瞬間も、決して盛り上がったテンションの中で決まったわけではありませんでした。いくつかの候補を見たあと、このビルを見学したとき──誰かが声高に「ここだ!」と言ったわけではなく、むしろ全員が静かに、でも確信を持って「……ここだよね」と頷いた。その“しっくりくる感じ”こそが、移転における最も大切なサインなのだと思います。

だからこそ、これから移転を検討される皆さんには、焦らずに、いくつかの物件と向き合ってみてほしいとお伝えしたいです。条件だけで決めようとすると迷い続けてしまうかもしれませんが、直感と条件が両方そろう瞬間は、必ず訪れます。そしてその時、自分たちの働き方に自然とフィットする“出会い”があるはずです。

移転は大きな決断ですが、最終的には「ここで働く自分たちの姿がちゃんと想像できるか」が答えを教えてくれます。ぜひ、その感覚を大切にしてほしいと思います。

――貴重なお話をありがとうございました!

※掲載内容は取材当時のものです。

お客様プロフィール

株式会社アーク情報システム
  • 所在地:東京都千代田区麹町五丁目1番地 QV1麹町
  • URL:https://www.ark-info-sys.co.jp/
  • 業種:ソフトウェア開発からコンサルティング等
  • 種別:事務所
  • 坪数:311.76坪

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