オフィスビルの空室対策において、「リーシングマネジメント(LM)」という言葉を耳にする機会が増えています。
特に近年は、オフィス市場の変化やセットアップオフィスの増加により、単純に募集図面を配布するだけではテナントが決まりにくい時代になっています。
以前は「空室情報を仲介会社へ流せば決まる」というケースも少なくありませんでした。しかし現在は、物件ごとの差別化やターゲット設計、Webでの情報発信、ビジュアル訴求などが重要視されるようになっています。
その中で重要性が高まっているのが、リーシングマネジメント(LM)です。
本記事では、リーシングマネジメントの意味や仕事内容、PM・BMとの違い、さらに現代のオフィス市場におけるLMの役割についてわかりやすく解説します。
リーシングマネジメント(LM)とは?
リーシングマネジメント(LM)とは、オフィスビルや商業施設などの空室を埋め、安定した収益を確保・最大化するための募集・営業戦略業務を指します。
単純に空室を「貸す」だけではなく、収益性を意識しながら戦略的にテナント誘致を行うことが特徴であり、不動産価値を高めながら長期的な運営を目指す重要な業務です。
主な目的としては、以下のようなものがあります。
- 空室を早期に埋める(空室損失の最小化)
- 適正な賃料水準の維持・向上
- テナント満足度を高め、長期入居につなげる
また、リーシングマネジメントでは単なる「空室募集」だけではなく、以下のような幅広い業務を行います。
- 募集条件の設計
- ターゲット選定
- 仲介会社への営業活動
- 市場分析
- 賃料設定
- 内覧対応
- 契約条件の調整
オフィスビルの収益は、テナントが入居して初めて成立します。
そのため、空室期間を短縮し、適正条件で成約へ導くリーシングマネジメントは、不動産運営において非常に重要な役割を担っています。
リーシングマネジメント(LM)と専任媒介の違い
「リーシングマネジメント(LM)」と「専任媒介」は、どちらも空室を埋めるための活動に関わる言葉ですが、役割や立場は大きく異なります。
まず「専任媒介」は、オーナーが物件の募集を1社の仲介会社にのみ依頼する契約形態のことを指します。通常は「専任媒介契約書」を締結し、一定期間(一般的には3か月間)は他の仲介会社へ重ねて依頼することができません。
媒介契約には主に以下の3種類があります。
| 契約形態 | 特徴 |
|---|---|
| 専属専任媒介 | 1社のみ依頼可能。オーナー自身で見つけた相手とも直接契約不可。不動産会社は週1回の報告義務あり |
| 専任媒介 | 1社のみ依頼可能。ただしオーナー自身で見つけた相手とは直接契約可能。不動産会社は2週間に1回の報告義務あり |
| 一般媒介 | 複数の不動産会社へ依頼可能。オーナー自身で直接契約することも可能 |
専任媒介の主な役割は、「募集窓口」を一本化することです。
仲介会社はレインズやアットホームなどへ物件情報を掲載し、他の仲介会社からの問い合わせや紹介を待つ形でリーシング活動を行います。
一方、リーシングマネジメント(LM)は、単なる募集窓口業務ではありません。
LMは、オーナー側の立場で、
- どのような企業をターゲットにするか
- どのような条件で募集するか
- どうすれば早期成約につながるか
- どのように物件価値を伝えるか
などを戦略的に考え、実行していく業務です。
そのため、単にレインズへ掲載して問い合わせを待つだけではなく、
- 仲介会社への営業活動
- テナント企業への認知形成
- 市場分析
- 賃料調整
- 募集資料の改善
- Web施策やコンテンツ発信
などを通じて、積極的に空室の成約を目指します。
つまり、
- 「専任媒介」=募集契約の形態
- 「リーシングマネジメント」=空室を埋めるための戦略・実行業務
という違いがあります。
近年では特に、セットアップオフィスやハイグレードオフィスの増加により、単純な情報掲載だけでは差別化が難しくなっているため、マーケティング視点を持ったリーシングマネジメントの重要性が高まっています。
リーシングマネジメント(LM)と「PM・BM」との違い
不動産業界では、LMとあわせて「PM」「BM」という言葉も使われます。
それぞれ役割が異なるため、違いを理解しておくことが重要です。
| 項目 | 主な役割 |
|---|---|
| LM(リーシングマネジメント) | 空室募集・テナント誘致 |
| PM(プロパティマネジメント) | 建物運営・収支管理 |
| BM(ビルマネジメント) | 設備管理・清掃・警備 |
LMは「空室を埋めるための戦略と営業」を担うポジションです。
一方でPMは、契約管理や収支改善、テナント対応など、建物全体の運営管理を行います。
BMは、設備点検や清掃、警備など、建物を安全かつ快適に維持する役割を担っています。
つまりLMは、ビル収益に直結する“入口”の役割を担う重要な業務と言えます。
リーシングマネジメント(LM)の主な仕事内容
リーシングマネジメント(LM)におけるテナント誘致の活動内容は、多岐にわたります。具体的な内容は以下の通りです。
募集戦略の立案
まず重要なのが、物件をどのように市場へ出していくかという募集戦略です。
例えば、
- どの企業をターゲットにするのか
- セットアップ化するべきか
- 賃料設定をどうするか
- フリーレントを設定するか
- 分割区画にするか
などを、市場状況や競合物件を踏まえて検討します。
現在のオフィス市場では、単純な価格競争だけでは差別化が難しくなっており、「誰に選ばれる物件にするか」という視点が非常に重要になっています。
賃料査定・条件設定
周辺相場や競合状況を調査し、適正な募集条件を設定します。
賃料が高すぎれば反響が減少し、安すぎれば収益性が悪化します。
そのためLMでは、市場バランスを見ながら最適な条件設計を行う必要があります。
また近年では、
- 原状回復免除
- 居抜き相談
- 家具付き
- セットアップ対応
など、条件面による差別化も増えています。
仲介会社への営業活動
オフィスリーシングでは、仲介会社との連携が非常に重要です。
どれだけ良い物件でも、仲介営業担当者に認知されていなければ、顧客への提案候補に入りません。
そのためLMでは、
- 物件情報の共有
- 定期的な営業活動
- 内覧会の実施
- 市況情報の提供
などを通じて、仲介会社との関係構築を行います。
特に大型ビルやセットアップオフィスでは、「どのような魅力を持つ物件なのか」を営業担当者に正しく理解してもらうことが重要です。
Web掲載・物件訴求
近年のリーシングにおいて、Web施策の重要性は急速に高まっています。
以前は紙の募集図面(マイソク)が中心でしたが、現在はテナント企業の担当者自身がWeb検索を行い、物件比較をするケースが一般的になっています。
そのため、
- 物件パンフレット
- 写真
- コンテンツ記事
- LP(ランディングページ)
- 動画
- HTMLメール
などを活用しながら、物件価値を伝えることが重要になっています。
特にセットアップオフィスでは、デザイン性や働き方との相性が重視されるため、ビジュアル訴求によって反響数が大きく変わるケースも少なくありません。
内覧対応・クロージング
反響獲得後は、実際の内覧対応を行います。
内覧では単にスペック説明をするだけではなく、
- どのような働き方ができるか
- どのような企業に向いているか
- 移転後のイメージ
まで提案することが重要です。
特に近年は、オフィスに「採用」「ブランディング」「コミュニケーション活性化」などを求める企業も増えており、空間価値を伝える提案力が求められています。
なぜ今リーシングマネジメント(LM)が重要なのか
オフィス市場の競争が変化している
近年は新築大型ビルの供給やセットアップオフィスの増加により、オフィス市場の競争環境が変化しています。
単純に「駅近」「大型ビル」というだけでは差別化が難しくなり、物件ごとのコンセプトや魅力をどう伝えるかが重要視されるようになっています。
セットアップオフィスとは?
貸主側で内装工事を行い、場合によってはデスクや椅子などの家具を設置するオフィス形態です。これにより、テナントの作業コストや初期費用を大幅に削減し、入居時の負担を軽減します。
意思決定スピードが速くなっている
セットアップオフィスの増加により、企業側の意思決定スピードも変化しています。
以前は内装設計から検討するケースが一般的でしたが、現在は「すぐ入居できる」「すぐ働ける」物件ニーズが高まっています。
そのため、
- 初見で魅力が伝わるか
- Web上で比較しやすいか
- 内覧時の印象が良いか
などが成約率に大きく影響しています。
従来型LMと現代型LMの違い
従来のLMは、「空室情報を流通させること」が中心でした。
しかし現在は、よりマーケティングに近い役割へ変化しています。
| 従来型LM | 現代型LM |
|---|---|
| マイソク中心 | Web・動画・SNS活用 |
| 仲介会社依存 | エンド認知形成 |
| 条件訴求中心 | コンセプト訴求 |
| 空室募集中心 | ブランド形成 |
| 感覚的運営 | データ分析活用 |
特にセットアップオフィスでは、「どんな企業に合う空間なのか」を明確に打ち出すことが重要です。
単純な図面や賃料情報だけではなく、“働き方”まで提案するリーシングが求められる時代になっています。
セットアップオフィス時代のLM
セットアップオフィスでは、通常オフィス以上にリーシング力が重要になります。
理由は、内装や空間デザインによって物件価値が大きく変わるためです。
例えば、
- ラウンジ
- 会議室
- ファミレスブース
- デザインコンセプト
- 什器付きの執務スペース
などは、企業によって評価が大きく異なります。
そのため、
- どんな企業に向いているのか
- どんな働き方に合うのか
- どんな課題を解決できるのか
まで含めて発信する必要があります。
また近年では、
- LP制作
- 写真撮影
- 動画制作(AIパース動画等)
- HTMLメール配信
- コンテンツ記事
などを活用しながら、物件の世界観を伝えるケースも増えています。
これからのLMでは、「募集」だけではなく、「物件価値を市場へ伝えるマーケティング視点」がますます重要になっていくでしょう。
リーシングにおけるAI活用も進んでいる
近年では、リーシング領域においてもAI活用が進んでいます。
従来は図面や現地写真のみで募集を行うケースが一般的でしたが、現在ではAIを活用したパース制作や動画生成、レイアウトシミュレーションなどを通じて、より具体的に空間価値を伝える手法が増えています。
特にセットアップオフィスでは、「実際に入居した際の働き方をイメージできるか」が重要視される傾向があります。
そのため、
- AIパースによる完成イメージの可視化
- AI動画による空間演出
- AIを活用した什器レイアウト提案
などを活用し、テナント企業が入居後をイメージしやすいリーシング施策が注目されています。
単に空室情報を掲載するだけではなく、「その空間でどのように働けるか」を伝えることが、現在のリーシングでは重要になっています。
リーシングマネジメントは“攻めの運営”
リーシングマネジメントは、単なる「空室を埋める作業」ではなく、建物の収益力を高めるための“攻め”の運営活動です。
マーケットの動きに応じて柔軟に戦略をアップデートし、テナントにとって「ここで働きたい」と思わせる価値を提供していくこと。それが、これからの不動産運用におけるリーシングマネジメントの本質と言えるでしょう。
SLCの「リーシングコンサルティングサービス」
弊社では、オフィスビルのオーナー様向けに「リーシングコンサルティングサービス」というサービスを提供しています。このサービスは、弊社が運営するセットアップオフィス専門検索サイト「RAKNA(ラクナ)」と連携しており、ビルの空室率を劇的に改善するための包括的なソリューションを提供します。
従来は、空室を抱えているビルが持つ特徴を生かしてテナント誘致活動を行うだけのリーシング方法が一般的でしたが、「リーシングコンサルティングサービス」で提案するのは【セットアップオフィス化】+【テナントのニーズに合わせたテナント誘致】です。
セットアップオフィス化に伴う内装工事費用や家具の購入費用は、賃料に上乗せして長期的に回収します。
そのため、入居するテナントは一般的なオフィスよりも賃料が高くなりますが、成長過程にあるベンチャー企業などは、数年で再度移転する可能性が高いため、「初期費用を抑えられ、資産を持つ必要がない」という点でセットアップオフィスを選ぶことが多く、実際に成約率も年々向上しています。
また、内装工事費用の捻出が難しいオーナー様向けのプランも別途ございますので、以下よりお気軽にご相談ください。
まとめ
リーシングマネジメントは、オフィスビルのオーナー様にとって、テナント誘致や管理業務を円滑に進めるための不可欠です。業務は、計画立案からマーケティングなどいろいろな戦略があり、物件によってとるべき手法は異なります。従来の方法では対応しきれない企業のニーズや市場の変化に柔軟に対応し、空室を埋めるだけでなく、テナントの満足度を高めることで安定した運営を実現します。
弊社の提供するリーシングマネジメントサービス「リーシングコンサルティング」は、空室にお困りのビルの貸室をセットアップオフィスにし、テナント側のニーズにあわせてオフィスをつくっていくことで、ビルの空室率を劇的に改善します。専門チームによるマーケティング戦略やターゲットテナントへの直接アプローチ、契約交渉のサポートなど、包括的なサービスを通じて、オーナー様の資産価値を最大限に引き出します。
また、内装工事費用の捻出が難しいオーナー様向けの柔軟なプランもご用意しています。空室を抱えているオーナー様はぜひ一度、以下より詳細をご確認ください。
セットアップオフィス
マーケットレポート

都内のセットアップオフィス市場の動向を分かりやすく把握できる「マーケットレポート」を毎月配信しています。最新の平均賃料や募集件数の推移、成約実績をデータに基づいて掲載。セットアップ化を検討しているオーナー様にとって、適切な賃料設定等の経営判断の参考となる情報をタイムリーにご提供します。

