なぜ「内装付き」でも決まらないセットアップオフィスが生まれるのか

――“つくれば決まる”時代が終わった理由と、いま本当に求められている視点――

「内装を入れたのに、なぜ決まらないのか?」

ここ数年、オフィスリーシングの現場では「セットアップオフィス」という言葉が完全に定着しました。
内装工事をあらかじめ施し、テナントは初期投資を抑えてすぐに入居できる。
一見すると、これほど“決まりやすい条件”はないようにも思えます。

しかし現実には、

  • 内装付きなのに内覧が伸びない
  • 内覧は入るが、最終的に決まらない
  • 同じエリア・同じ賃料帯でも、決まる物件と決まらない物件がはっきり分かれる

といったケースが増えています。

「セットアップにすれば空室は解消できる」
そう考えて投資判断をしたオーナーほど、想定外の苦戦に直面しているのではないでしょうか。

本記事では、なぜ“内装付き”でも決まらないセットアップオフィスが生まれるのかを、リーシング現場の視点から整理し、これからのセットアップオフィスに本当に必要な考え方を掘り下げていきます。

「内装付き=価値」だった時代は、すでに終わっている

かつて、セットアップオフィスはそれ自体が強い差別化要素でした。

  • 内装費がかからない
  • 工期を短縮できる
  • おしゃれで今風

これらは、確かにテナントにとって大きな魅力でした。

しかし現在、都心部を中心にセットアップオフィスは急速に増加しています。
つまり、「内装が入っている」というだけでは、もはや選ばれる理由にならなくなっているのです。

今のテナントは、内装の有無ではなく、こうした視点で物件を見ています。

  • この内装は、自社の働き方に合っているか
  • 人員計画・成長計画に耐えられるか
  • 採用やブランディングに使えるか

単に「内装がある」だけではなく、“自分たちにとって意味がある内装かどうか”が問われるフェーズに入っています。は、すでに終わっている

決まらない理由①|「誰向けのオフィスか」が設計されていない

決まらないセットアップオフィスに共通して見られるのが、
ターゲットが曖昧なまま内装がつくられているという点です。

  • 何名規模の会社を想定しているのか
  • どんな業種・フェーズの企業か
  • 来客が多いのか、社内コミュニケーション重視なのか

こうした前提が整理されないまま、

「とりあえず会議室と執務席を入れて、今っぽく仕上げる」

という進め方をしてしまうと、結果的に誰にも“ちょうどよくない”オフィスが出来上がります。

テナントからすると、

  • 席数が微妙に足りない
  • 会議室のサイズや数が使いづらい
  • 無駄なスペースが多い

といった「惜しい違和感」が積み重なり、最終判断で他物件に流れてしまうのです。

決まらない理由②|“おしゃれ”と“使いやすさ”を混同している

セットアップオフィスの内装で、よくある落とし穴が
デザイン性を優先しすぎてしまうことです。

確かに、内覧時の第一印象は重要です。
しかし、最終的に契約を判断するのは、見た目だけではありません。

  • 実際の動線はどうか
  • 荷物や書類はどこに置くのか
  • 日々の業務を想像したときにストレスはないか

テナントは、内覧の短い時間の中でも、こうした“現実的な目線”で物件を見ています。

「写真映えはするが、働くイメージが湧かない」
この状態は、決まらないセットアップオフィスの典型例です。

決まらない理由③|賃料設定が“内装目線”になっている

「これだけ内装にお金をかけたのだから、この賃料は妥当だ」

オーナー側の感覚としては、非常に自然です。
しかし、テナントは内装コストではなく、市場との比較で賃料を判断します。

  • 同エリア・同規模で、他にどんな選択肢があるか
  • 通常オフィス+内装工事をした場合と比べてどうか
  • 成長後の賃料負担に無理はないか

セットアップであるがゆえに、賃料が相場から一段上がりすぎてしまうと、
「悪くはないが、決める理由がない物件」になってしまいます。

決まらない理由④|募集・伝え方が“普通のオフィス”のまま

実は、リーシング現場で非常に多いのがこのケースです。

せっかくセットアップオフィスなのに、

  • 図面とスペックしか伝わらない
  • 写真が少ない・魅力が見えない
  • どんな使い方ができるのか想像できない

といった、通常オフィスと変わらない募集方法になってしまっている。

セットアップオフィスは「完成品」だからこそ、

  • どんな働き方を想定しているのか
  • どんな企業にフィットするのか
  • どんなメリットがあるのか

を、しっかりと言語化・ビジュアル化しなければ、その価値は伝わりません。

決まるセットアップオフィスに共通する視点とは?

一方で、同じエリア・同じような条件でも、驚くほどスムーズに決まるセットアップオフィスが存在します。

それらに共通しているのは、次の視点です。

  • 「誰に使ってほしいか」が明確
  • 内装が“働き方の提案”になっている
  • 賃料と内容のバランスが市場と合っている
  • 募集時に価値が正しく伝えられている

つまり、内装はあくまで手段であり、目的は“選ばれる理由をつくること”なのです。

これからのセットアップオフィスに必要なのは「設計×リーシング」の視点

これからの時代、セットアップオフィスは

つくることではなくどう決め切るか

が問われます。

そのためには、

  • 市場調査に基づいた企画
  • ターゲットを見据えたレイアウト設計
  • 募集・プロモーションまで含めたリーシング戦略

を一体で考える必要があります。

内装単体ではなく、「どう使われ、どう選ばれ、どう決まるか」までを設計すること
それが、“決まるセットアップオフィス”を生む最大のポイントです。

おわりに|「内装付き」から「選ばれるオフィス」へ

セットアップオフィスは、もはや特別な存在ではありません。
だからこそ、

  • なぜ決まらないのか
  • 何が足りないのか
  • どうすれば選ばれるのか

を冷静に見直すことが重要です。

「内装を入れたのに決まらない」
その違和感こそが、次の一手を考えるヒントになります。

オフィスは、空間であり、同時に“事業の器”でもあります。
その価値を最大限に引き出すために、いま一度、セットアップオフィスのあり方を見直してみてはいかがでしょうか。

都内のセットアップオフィス市場の動向を分かりやすく把握できる「マーケットレポート」を毎月配信しています。最新の平均賃料や募集件数の推移、成約実績をデータに基づいて掲載。セットアップ化を検討しているオーナー様にとって、適切な賃料設定等の経営判断の参考となる情報をタイムリーにご提供します。

この記事を書いた人

福田勇人

オフィス仲介歴20年以上、オフィス不動産に関する専門家です。2002年に新卒でオフィス仲介会社に入社し、オフィス物件の仲介に携わりました。その後、2012年にスリースターに入社し、仲介営業としての経験を積んでまいりました。現在は広報やマーケティングを担当し、オフィス不動産における情報を提供し、お客様に最適なソリューションを提案する役割を果たしています。