2026年のオフィス市場では、「セットアップオフィス」という選択肢が急速に広がっています。
以前までは、オフィス移転といえば企業側がゼロから内装工事を行うのが一般的でした。しかし現在は、貸主側が内装や家具まで整えた状態で貸し出す“セットアップ型”のニーズが高まっています。
特に渋谷を中心としたベンチャーエリアでは、その流れが顕著です。
採用競争の激化や事業拡大スピードの加速によって、「すぐ入居できる」「初期費用を抑えられる」「短期間でも移転しやすい」という価値が重視されるようになりました。
一方で、従来型の通常オフィスにも当然メリットがあります。
長期間利用する前提であれば、自社仕様にフルカスタマイズできる自由度や、長期的なコストメリットは依然として大きいです。
つまり重要なのは、「どちらが安いか」だけではなく、自社の成長フェーズや移転サイクルに合っているかどうかです。
本記事では、
- セットアップオフィスと通常オフィスの違い
- キャッシュフローや減価償却への影響
- ベンチャー企業にセットアップオフィスが向いている理由
- 渋谷でセットアップオフィスが増えている背景
- 会計・原状回復・人的コストの考え方
などを、オフィス仲介の現場視点から詳しく解説します。
セットアップオフィスとは?ベンチャー企業に向いている理由
ここ数年で、オフィス移転の考え方はかなり変わりました。
以前は、
- 物件探し
- レイアウト設計
- デザイン打ち合わせ
- 内装工事
- 家具選定
- 通信工事
など、多くの工程を企業側が進める必要がありました。
しかし今は、貸主が内装を完成させた状態で貸し出すセットアップオフィスが増えています。
企業側は、レンタルオフィスに入居するような感覚で、自分たち専用のオフィスを持つことができます。
もちろん、貸主が負担した内装工事費用は賃料に一定程度上乗せされています。
ただ、成長フェーズのベンチャー企業にとっては、「内装資産を自社で持つこと」自体がリスクになりやすいです。

渋谷でセットアップオフィスが増えている理由とは?
ベンチャー企業の集積地である渋谷では、以前からオフィス移転のサイクルが非常に早いです。
前述した通り、成長しているベンチャー企業の多くは、3〜4年以内にオフィス移転を行います。
そう考えると、
- 最初はレンタルオフィス
- 次にセットアップオフィス
- さらに拡張移転
という流れはかなり合理的です。
特に渋谷は、
- 採用
- ブランディング
- アクセス
- 企業イメージ
という面で圧倒的な強さがあります。
「人を採用するために渋谷へ行く」
これは今でもベンチャー企業では非常に大きな意味を持っています。

居抜きオフィスとセットアップオフィスの違い
実は、こうした流れの原型になっているのが「居抜きオフィス移転」です。
15年以上前から、ベンチャー企業間では居抜きオフィス移転という手法が存在していました。
これは前のテナントが作り込んだ内装を、そのまま次の企業が引き継ぐやり方です。
この最大のメリットは、
- 内装工事費を削減できる
- 移転期間を短縮できる
- すぐに業務開始できる
という点にあります。
つまり、現在のセットアップオフィスと考え方はかなり近いです。
むしろ、現在のセットアップオフィスは、この居抜きオフィス文化をヒントに進化した形と言っていいと思います。
その後、貸主側が戦略的に内装を作り込み、募集する「内装付きオフィス(セットアップオフィス)」という形へ変化していきました。
結果として、
- 移転回数が多い
- 成長企業が多い
- 採用競争が激しい
という特徴を持つ渋谷エリアでは、セットアップオフィスとの相性が非常に良いです。
そのため現在、渋谷ではセットアップオフィスの供給が急増しています。
そしてこの需要の強さこそが、都内でも渋谷のオフィス賃料を押し上げている大きな理由の一つだと思います。

セットアップオフィスと通常オフィスはどちらがお得?
結論から言うと、
- 10年以上同じオフィスを使う企業
→ 通常オフィスを借りて自社で内装工事した方が金銭的メリットは大きいです - 3〜4年で移転する成長企業
→ セットアップオフィスの方が合理的です
という構図になります。

ベンチャー企業がセットアップオフィスを選ぶ理由
成長しているベンチャー企業は、10年間同じオフィスに居続けるケースがほとんどありません。
実際には、
- 人員増加
- 採用強化
- ブランド変更
- 出社回帰
- エリア戦略変更
などによって、早ければ3年、遅くても4年前後で移転する企業が多いです。
つまり、長期利用前提で組まれている通常オフィスの投資回収構造と、ベンチャー企業の成長スピードが噛み合っていません。

セットアップオフィスと通常オフィスの比較表
セットアップオフィスと通常オフィスは、単純に「内装付きかどうか」だけの違いではありません。
実際には、
- 初期費用
- キャッシュフロー
- 会計処理
- 移転スピード
- 原状回復リスク
- 社内工数
など、企業経営に関わるさまざまな部分に影響します。
特に成長スピードが速いベンチャー企業では、「どちらを選ぶか」によって、数年後のコスト構造や移転負担が大きく変わるケースも少なくありません。
一方で、長期利用を前提とする企業であれば、通常オフィスで自社独自の空間を構築するメリットもあります。
そのため、単純な賃料比較だけではなく、「何年使う予定なのか」「どの程度のスピード感で組織拡大するのか」まで含めて比較することが重要です。
ここでは、セットアップオフィスと通常オフィスの違いを、実務的な観点から整理して比較します。
| 項目 | セットアップオフィス | 通常オフィス |
|---|---|---|
| 初期費用 | 低い | 高い |
| 内装工事 | 不要 | 必要 |
| 家具購入 | 不要な場合が多い | 必要 |
| 入居までの期間 | 短い | 長い |
| 意思決定コスト | 小さい | 大きい |
| 原状回復リスク | 小さい | 大きい |
| 減価償却リスク | なし | あり |
| 3〜4年退去時 | 有利 | 不利 |
| 10年以上利用 | 不利 | 有利 |

通常オフィスで発生する減価償却と特別損失
多くの企業が見落としがちなのが、内装工事費用の会計処理です。
通常オフィスでは、数千万円単位の内装工事を行うケースも珍しくありません。
しかしその費用は、すぐに経費化できるわけではなく、減価償却によって長期間で費用計上されます。
たとえば、
内装工事費÷10年
という形で、10年程度に分けて費用化されるケースが一般的です。
つまり3〜4年で移転すると、
- 未償却残高
- 原状回復費用
- 移転費用
などが一気に発生します。
これは会計上、「特別損失」として重くのしかかるケースもあります。

セットアップオフィスはキャッシュフロー面でも有利
確かに、月額賃料だけを見ると通常オフィスの方が安く見えることはあります。
ただ実際には、
- 初期内装費
- 家具購入費
- 原状回復費
- 設計費
- PM費用
- 社内工数
などを含めて考える必要があります。
特に3〜4年で退去する場合、セットアップオフィスとの差額は急速に縮まり、場合によっては逆転します。
オフィス移転で見落とされがちな人的コスト
通常オフィスでは、移転プロジェクトそのものがかなり大きな業務負担になります。
実際には、
- 数ヶ月間の打ち合わせ
- レイアウト調整
- デザイン選定
- 業者対応
- 社内調整
など、多くの人的リソースが必要です。
特にベンチャー企業では、本来事業成長に使うべき時間が、移転業務に割かれてしまうケースも少なくありません。
これは数字には見えづらいですが、かなり大きな機会損失だと思います。

2026年は内装工事費・原状回復費が上昇している
現在は、
- 建築費高騰
- 人件費上昇
- 資材価格上昇
などによって、内装工事費そのものが年々上がっています。
加えて、退去時には高額な原状回復費用も発生します。
そのため、成長途中の企業にとっては、「通常オフィスを借りてフル内装を行うメリット」は以前より小さくなっています。

セットアップオフィスは成長企業向けのオフィス形態
最近のセットアップオフィスは、
- 敷金が低い
- 家具付き
- 会議室付き
- 即入居可能
- 初期投資を抑えられる
という特徴を持っています。
まさに、
「変化スピードが速い企業向けのオフィス」
と言えると思います。





